研究概要 |
スナネズミにヘリコバクタピロリ菌を感染させ、感染させたネズミに、更に食塩を負荷、沃素欠乏食を与える群および感染ネズミに食塩負荷と沃素欠乏食を同時に与えた群並びにそれぞれの単独負荷群ヘリコバクタピロリ感染なしで食塩負荷とヨー素欠乏の群計7群のネズミ170匹を2年6ヶ月間飼育した。現在、胃標本のパラフィン包埋を行ったところである。今後、切片を作りヘマトキシリンエオジン染色、パス染色、アルーシャンブルー染色並びに免疫組織学的検査(PCNA,P53発現)などを行い胃発がんの機序を明らかにしつつ、これまでのステリグマトシスチン投与に関する研究結果(Scand J Gastroenterol,2003)と比較検討する予定である。(日本臨床,2004) (1)未処理群に胃病変は全く認められなかった。 (2)ヘリコバクタピロリ感染ネズミへの食塩添加は胃発がんを促進するが、食塩のみでは胃発がんは認められなかった。 (3)同様にヘリコバクタピロリ感染と低ヨー素食投与は胃発がんを促進する。しかし、低ヨー素食だけでは胃発がんは見られなかった。 (4)ヘリコバクタピロリ感染群への食塩添加並びにヨー素欠乏食は胃病変に著しい変化を起こし著名な腸上皮生像の出現をもたらした。 (5)予想外な所見として、非感染群でも食塩添加とヨー素欠乏食群では腸上皮化生の出現が見られた。 (6)胃粘膜下組織を破壊して筋層下への侵入上皮細胞は明らかに対照群のものとは異なっていることが明らかとなった。即ち粘液分泌細胞である青色斑点が多数見られた。 結論的に考察すると、 (7)ヘリコバクタピロリ菌は発がんの有利な条件を作り、高食塩は促進作用、ヨー素欠乏やV.C欠乏は修復機構に関与していることが推測された。
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