研究概要 |
ヒト発癌抑制機構として最も重要な役割を果たしているp53-RB経路に着目した我々は、その経路に関与する遺伝子の発現を活性化させることが癌予防の戦略として効果的であると考え(遺伝子調節化学予防法)、p53-RB経路に関与する種々の遺伝子発現に対する食物由来成分の効果を検討した。 食物繊維の代謝産物であり大腸内に存在する酪酸は、以前の我々の報告によりp21/WAF1遺伝子プロモーターを活性化させることで細胞増殖抑制、すなわち癌予防に働いていることが明らかとなった。しかしながら酪酸によって誘導される様々な現象はp21/WAF1遺伝子の活性化だけでは説明しえない為、我々は他の酪酸によって誘導される遺伝子の検索を実施した。その結果、G2/M期停止やアポトーシスに関与する遺伝子であるgadd45遺伝子の誘導を見出し、その詳細な機構を検討した(現在、投稿中)。また、p21/WAF1遺伝子と同様にG1期停止に関与する遺伝子であるp19遺伝子の誘導も見出した。p19遺伝子に関しては、まずプロモーター領域のクローニングと解析を実施し(FEBS Letters, Matsuzaki, Y., Sakai, T.et al. )、その酪酸による活性化機構も検討を行った(現在、投稿中)。 またgadd45遺伝子に対しては、植物性食品由来成分フラボノイドであるゲニステインやケルセチンが発現量を増加せせることを見出しており、現在その詳細な機構を検討中である。
|