研究分担者 |
佐藤 敏彦 北里大学, 医学部, 助教授 (10225972)
角田 正史 北里大学, 医学部, 助教授 (00271221)
工藤 雄一朗 北里大学, 医学部, 助手 (60348505)
川上 倫 北里大学, 医学部, 教授 (60177649)
小谷 誠 東京電機大学, 工学部, 教授 (60057205)
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研究概要 |
【緒言】わが国では、毎年数千種類の化学物質が新たに製造されており、人体に対する影響の有無を予知するシステムの構築が求められている。特に、有害性の明らかな石綿の代替品として使用されている人造非晶質繊維の安全性評価は重要であると考えられる。本研究では、代表的な人造非晶質繊維であるロックウール(RW)、酸化チタン(TiO_2)、チタン酸カリウムウイスカ(PT)、マイクログラスファイバー(MG)と、インジウム砒素(InAs)、コピートナー、酸化カドミウム(Cd0)の細胞傷害性とRWの動物肺への滞留性実験を行い、細胞・器官レベルでの安全性評価システムの構築を試みた。 【方法】1)in vitro実験:フィッシャー系雄性ラットから、気管支肺胞洗浄により得られた肺胞マクロファージ(AM)に、緩和の指標となる四三酸化鉄粒子を添加し、さらに実験群には目的添加物質を加え、陰性対照と同様に炭酸ガス培養器にて37℃で18時間培養した。細胞骨格の機能を評価できる細胞磁界測定は培養後、各群のAMを外部より磁化し、磁化後20分間の残留磁界を測定し、その減少速度(緩和)を評価した。細胞外逸脱酵素測定は細胞磁界測定で使用した培養液に含まれる乳酸脱水素酵素の(LDH)活性値を測定した。DNA ladder検出法は培養後、各群のAMよりDNAを抽出し、アポトーシスの有無を検討した。さらに、電子顕微鏡による形態学的観察を行った。2)in vivo実験:A, B.C社製RWをそれぞれ目標繊維数濃度100繊維/m^3に設定し,雄性ラットを用いて1日3時間5日間鼻部吸入曝露を行い曝露直後,1,2,4週後に屠殺し、肺を灰化後、位相差顕微鏡により肺内繊維数およびサイズ(長径・短径)から肺内繊維滞留率を検討した。またA社のRWについては、1日6時間5日間鼻部吸入曝露も行った。 【結果および考察】1)in vitro実験:磁界測定およびLDH逸脱を指標とする人造非晶質繊維の細胞有害性は、TiO_2,PT>MG>RWであった。粒子状と繊維状のTiO_2の有害性を比較したところ、繊維状のTiO_2に細胞有害性を認めた。したがって化学組成と共に形状も生体影響の発現に関与していることが示唆された。その他の物質では、Cd0の有害性が強く、InAs、コピートナーはほとんど有害性を示さなかった。2)in vivo実験:吸入曝露後の繊維滞留性試験は、肺の線維化および発がん性の評価に利用されている。RWのラット鼻部曝露後の肺滞留性を観察た結果、肺内繊維数およびサイズは直後から4週にかけて減少し、既報の石綿と比べて肺内繊維滞留性が低いことがわかった。また肺における病理学的変化は軽微だった3)細胞・器官レベルでの評価:RWについては、細胞と肺の有害性評価を行い、両者の結果はほぼ一致した。したがって細胞有害性評価を一次に、器官評価を二次の評価として行う可能性が示された。今後は、細胞で有害性が疑われた物質について、肺滞留性試験を行う必要がある。
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