研究課題
基盤研究(B)
シックハウス症候群として問題になっている室内環境中には多種類の化学物質が存在するとともに多彩な臨床症状が知られているが、このような病態とホルムアルデヒドおよびフタル酸エステル等室内環境汚染に関連する化学物質の関係を検討した。そのためにまず、それぞれの測定法を確立し、さらに、ホルムアルデヒド濃度削減に関する方法として、光触媒蛍光灯の有効性を見い出した。また、シックハウス症候群には、ストレスが関与していると言われていることから、次に、ストレスマーカーに関する検討を加えた。老化赤血球の分解産物のひとつであるビリルビンには、最近、抗酸化作用があることが知られ、その生理的意義が注目されていることから、ビリルビンを産生する律速酵素であるヘム分解酵素について、ストレスとの関係を取り上げた。ヘム分解酵素のなかでもHeme Oxygenase-1(HO-1)は重金属や酸化を始めとする種々のストレスによって誘導されることが良くしられているが、特に酸化ストレスの原因となる活性酸素(ROS)とHO-1誘導の関係を詳細に検討した。生体内のROSの検出試薬であるdihydrodichlorofluorescein-diacetate(DCFH)の有効性とHO-1の誘導の関係を調べた結果、それらは必ずしも一致せず、むしろヘムと反応して必ずしも有効でないことがわかった。しかし、細胞をストレス誘導条件でない無処理の状態で培養するとDCFHの反応性は不均一であり、これの原因が何に起因するのかは不明であった。また、細胞のストレス応答を視覚的にとらえることの試みとして、ストレス蛋白質として知られているHO-1遺伝子の構造のプロモーター領域にある種々の金属応答配列やストレス応答配列をルシフェラーゼやGFP構造遺伝子に組み込んだレポーター培養細胞株を作製した。これらを用いて金属暴露や化学物質の検出を試みたところ、ルシフェラーゼ活性やGFP発光についてヒ素、カドミウム、水銀さらには有機化合物などを加えた場合における活性の上昇を確認した。
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