研究概要 |
わが国の一般地域住民において、睡眠呼吸障害の循環器疾患の危険因子や発症リスクとの関連について系統的な研究はない。そのため、地域住民を対象とした睡眠呼吸障害のスクリーニング検査を行い、循環器疾患の危険因子との関連を検討し、睡眠面から生活習慣病を予防する方策を検討した。茨城県K町の基本健康診査受診者のうち睡眠についての簡易問診票の有効回答者3,907人(男性1,537人、女性2,370人)を対象とした。このうち睡眠時のいびきの頻度または、睡眠時の呼吸停止の頻度から488人(男性298人、女性190人)を睡眠呼吸障害の疑いありとし、睡眠中の動脈血酸素飽和度(SpO_2,%)測定の対象者とした。測定に参加した342人(男性219人、女性123人)にパルスオキシメータを用いて睡眠中のSpO_2の持続測定を行った。SpO_2の変動曲線において一時的に2%以上低下した後、上昇した場合をdipと定義し、その1時間当たりの回数(oxygen desaturation index, ODI)を算出した。対象者をODI値で3分割した3群間の血圧値を性別と年齢を調整した共分散分析にて比較したところ、収縮期血圧(P=0.02)、拡張期血圧(P<0.0001)とも、ODI区分との間に有意な関連が認められた。さらにbody mass index(BMI)、飲酒量および降圧剤服薬状況を調整すると、ODI値と血圧値との関連は弱まったが、拡張期血圧では依然として有意な関連を認めた(78.9,82.4,82.5mmHg ; P=0.02)。以上から、一般地域住民において、睡眠呼吸障害がBMI等の交絡因子とは独立して血圧値と関連することが示唆された。睡眠呼吸障害のスクリーニングを従来の健康診断に加え、睡眠呼吸障害の軽減を図る保健指導を事後措置として進めることは、高血圧の予防・管理にも寄与する可能性が示された。
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