研究概要 |
地域における睡眠呼吸障害と血圧との関連 循環器疾患のひとつである高血圧と睡眠呼吸障害との関連について、欧米諸国を中心に臨床および疫学研究の成績が近年報告されているが、わが国の一般集団において睡眠呼吸障害と血圧値との関係についての報告は少ない。今回、我々は、地域住民を対象として睡眠呼吸障害と血圧値との関連を検討した。 秋田県I町、茨城県K町、大阪府Y市M地区計3地域の基本健康診査を受診した40-69歳の地域住民男性1,424人を対象に、パルスオキシメトリを実施した。3%ODI値と血圧値もしくは高血圧との関連を、重回帰分析および多重ロジステック解析により、年齢、肥満度(BMI)、飲酒量、喫煙量を調整して分析した。 3%ODI値と収縮期、拡張期血圧との間には有意な正の関連を認めた。3%ODI値が5(回/時間)増加する毎に、収縮期血圧は、0.8mmHg(95%信頼区間[CI],0.0-1.6)、拡張期血圧は、0.7mmHg(95%CI,0.3-1.1)増加した。3%ODI値が5未満の群に対する3%ODI値が15以上の群の高血圧のオッズ比は、1,6(95%CI,1.1-2.5)であった。この関連は、肥満者においてより顕著であった(オッズ比=1.96、95%CI,1.09-3.52)。 夜間の酸素飽和度低下の程度と高血圧との間に有意な関連を認めたことにより、日本人男性において、睡眠呼吸障害は高血圧の進展に影響を及ぼす可能性が示された。また、検討を進めるうちに、睡眠呼吸障害と日常のアルコール摂取量との間に関連があることが世界で初めて疫学調査でわかり、その成果はJAMA誌(インパクトファクター:21、研究発表欄に記載)に掲載された。 今回の結果をうけて、次年度は肥満度別にみた睡眠呼吸障害と血圧の関連について検討を行う。
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