研究概要 |
当研究課題は,女性看護職を対象とした前向きコホート研究である。女性における生活保健習慣や女性ホルモン剤利用の実態把握と評価を目的としている。群馬パイロット研究GNHSでは1,748人(うち10年間継続調査に同意したコホート参加者は931人)から回答を得た。その後,全国47都道府県に拡大したJNHSでは,2004年度末までに計45,970人(うちコホート参加者は15,951人)からベースライン調査の回答を得ている。今年度は、JNHSで2,000人を超える新規の回答者(うちコホート参加者は約1,800人)を得た。また、コホート既参加者においては,GNHSで6年後調査,JNHSでは9,009人に4年後調査,5,274人に2年後調査として,継続調査を実施した。 本年度は,保健医療習慣のうちホルモン補充療法(HRT)の利用者頻度について重点的に分析を行った。欧米では,閉経後女性の約半数がHRTを利用するといわれていた。2002年に米国の大規模女性疫学研究Women's Health Initiative(WHI)から,冠動脈疾患増加の可能性など予想に反する結果が発表され、その後の各国でのHRT利用の動向が注目されている。そこで、JNHSベースライン調査データのうち,45〜64歳の15,441人(WHI報告前:12,979人,WHI報告後:2,462人)について,HRT利用者頻度と使用薬剤内容を比較した。 自然閉経後女性でのHRT現使用者(Current User)の割合は,WHI報告前には45-49歳で9,5%、50-54歳で4.7%、55-59歳で3.7%,60-64歳で2.8%であったが,WHI報告後では45-49歳で11.8%,50-54歳で5.1%,55-59歳で4.4%、60-64歳で1.8%と,変化はみられなかった。一方,現使用薬剤での貼付剤の割合は,WHI報告前13.8%からWHI報告後25.3%と約2倍となっていた。このことから,わが国ではWHI報告によってホルモン補充療法の利用者頻度に変化は無いものの、内服剤から貼付剤へと使用薬の内容に変化があることが示唆された。
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