研究概要 |
数多くの実験研究より、大豆にふくまれるイソフラボンにエストロゲン様作用のあることが知られている。エストロゲンが、皮膚の老化の進行を遅らせたり、骨粗鬆症を予防する働きがあるとされているため、生物学的にはイソフラボンを多く含む大豆製品の摂取も同様に作用することが期待される。本年度は87名(38歳-68歳)の閉経後女性を対象に、イソフラボンその他の栄養摂取、血清エストロゲン、骨密度の関連を調査した。対象女性らは食物摂取頻度調査票(FFQ)を含む生活習慣に関するアンケートに回答した。このFFQは申請者らが開発したもので、食品および料理169項目の過去1年における平均的な摂取頻度と1回の摂取量を尋ね、総エネルギー、各種の栄養素、食品群の摂取量を推定する。大豆製品およびイソフラボンの摂取量推定は9項目の大豆食品をもとに行った。このFFQによる大豆製品摂取量と1年にわたる12回1日食事記録による同推定量は相関係数0.7と比較的良好な妥当性を示した。この対象集団における大豆製品、イソフラボン摂取量の平均はそれぞれ62.4(SD 41.2)g、32.0(SD 17.2)mgであった。空腹時血液の採取を行い、血清E2、SHBG、genistein、daidzein、equolを測定した。血清イソフラボン代謝物はHPLC-MS-MS方法で測定した。骨密度は踵骨においてsingle-energy X-ray absorptiometry法で、OsteoAnalyzer, Siemens-Osteonを用い測定した。また骨形成マーカーとして血清中のBone-specific ALPも測定した。年齢、BMI、初経年齢、喫煙、総エネルギー、植物性脂質、ビタミンC、塩分摂取で補正後、E2/SHBG比は骨密度と統計的に有意な正の相関係数(Spearman)を示した(r=0.38,p<0.01)。大豆製品およびイソフラボン摂取は骨密度と有意な関連性を示さなかった(r=-0.07,r=-0.02)。血中イソフラボン代謝物も骨密度と有意な関連性は見られなかった。但し、equolを検出できる女性に検出できない女性を比べ、統計的に有意でないものの(p=0.06)、高い骨密度が認められた。本研究は横断研究という制限をもつものの内因性エストロゲンが骨密度と関連性があることは認められた。しかし、大豆およびイソフラボンの関与を支持するデータは得られなかった。
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