数多くの実験研究より、大豆にふくまれるイソフラボンにエストロゲン様作用のあることが知られている。エストロゲンが、皮膚の老化の進行を遅らせたり、骨粗鬆症を予防する働きがあるとされているため、生物学的にはイソフラボンを多く含む大豆製品の摂取も同様に作用することが期待される。本研究は、横断研究のデザインで大豆イソフラボン摂取と骨密度、皮膚の水分・油分、弾性などの測定値との関連性を調べることを目的とした。 閉経後女性を対象とした調査では、血清エストロゲンが骨密度と統計的に有意な正の関連性を示したが、食物摂取頻度調査票により推定されたイソフラボン摂取量、血中イソフラボン代謝物、ゲニスタイン、ダイゼインとは関連性が認められなかった。イソフラボン代謝物の一つであるエコールは代謝が認められた者に、統計的に有意でないものの高い骨密度が示された。閉経前女性では、イソフラボン摂取量と骨密度は負の相関関係が認められたが、大きな関連性ではなかった。骨密度骨密度に関連するとされているinsulin-like growth hormone(IGF-1)とイソフラボン摂取との関連についても評価したところ、両者の関連性は認められなかった。 イソフラボンのエストロゲン様、あるいは反エストロゲン様作用に関する考察も他のバイオマーカーとの関連結果よりおこなった。大豆摂取は拡張期血圧の低下と関連しており、血圧に対してエストロゲン様作用を示す可能性が示唆された。一方、イソフラボンは内因性エストロゲン値を低下させる作用が認められている。内因性エストロゲンが低いと心血管障害のリスク要因である血清ホモシステイン値が高いという報告があるが、大豆摂取と血清ホモシステイン値は負の関連性を示し、イソフラボンがこの点反エストロゲン作用を持つとしても、大豆に含まれる葉酸やビタミンB6などの考えられる血清ホモシステイン低下作用にオフセットされるのかもしれない。 皮膚所見は、ダニエルらによる観察スコアーに加え、水分・油分測定、キュートメータによる皮膚弾性測定、メグザメーターによる色の測定、3次元しわ解析により、評価を行った。これらの測定値と年齢との関係を120名を対象に調べたところ、水分、油分、弾性に年齢との関連性が認められた。
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