研究概要 |
(1)H14年度は追跡研究の基盤となるbaseline dataの収集に努め、一医療機関の健診受診者から男性22128名を一次対象者として得た。この集団の受診票、問診票、検査成績からインスリン抵抗性症候群≒メタボリックシンドローム(MS:肥満、血圧高値、高血糖、血清脂質異常の4つのMS因子で診断)の評価に必要な因子(現病・既往歴、血圧、血糖、血清中性脂肪、HDL-コレステロール)やその交絡因子(年齢、生活習慣、血液検査値など)、および職業因子(職種、勤務時間、週休数、交替勤務、作業中身体活動など)を収集した。同様にH15,16,17年度はそれぞれ14614,17953,18066名(このうち、H14年度の一次対象者と同一者はそれぞれ12599,14507,14038名)の健診資料を集めた。これらすべての資料をデータベース化した。(2)H14年度の22128名から1)年齢30-59歳、2)full-timeの有職者、3)治療中疾病なし、4)糖尿病、高血圧、高脂血症、悪性腫瘍の既往なし、5)空腹時採血で溶血なし、6)用いた資料に欠損値なし、の6条件をすべて満たす健康者15242名を選択した。この対象者では、A)保安職(警察・消防など)、サービス職、管理職、B)休日のほとんどない者、C)一日勤務時間が短い者(これは明らかに年齢が高い影響と考えられた)、D)常夜勤者、E)作業での身体活動が少ない者、などで上記の4つのMS因子およびMS有症率が高い傾向がみられた。(3)前記の15242名のうち3年後の健診資料が得られた6739名では、3年後に4つのMS因子およびMS有症者数がすべて増加する傾向がみられた(+83〜+241名)。一方、MS因子やMSが減少・消失する者も少なからず存在した。これらのMS因子やMSの増加や減少と職業因子の関連性は今後に評価する。(2)(3)での今後の統計処理では両者ともbaselineでの年齢や生活習慣(飲酒、喫煙、運動)を交絡因子として詳細に実施する。(4)上記医療機関の過去資料(1988〜2000年度)を用いた糖尿病罹患(追跡中に空腹時血糖≧126mg/dl or治療中)に関する追跡調査を複数実施し、学会、論文に報告した。(5)この調査研究は名古屋市立大学医学部倫理審査委員会の承認を得ている。
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