研究概要 |
初年度から昨年まで、2時間仮眠と1時間仮眠で、夜勤前半と後半の仮眠取得の効果について検討してきた。本年度は1時間仮眠に着目し、より覚醒水準維持効果の高い仮眠取得時刻帯を明らかにすることとした。実験は1条件1泊2日の日程で実験実施の間隔を1週間空けて4回繰り返して行った。被検者は男子大学生,非喫煙者,朝型・夜型テストによって中間型と判定された者を条件に8名を採用した。実験条件は仮眠取得が0時から1時(E条件)、2時から3時(M条件)、4時から5時(L条件)の3条件と、仮眠を取得しない条件(N-N条件)を加えた計4条件を設定した。実験実施前に測定テストの習熟および実験環境に慣れる事を目的に1泊2日の練習日を設けた。測定は、夜勤作業を模擬して毎時間30分の英文転写作業を課し,20分間の測定テストを実施した。測定テストは日本産業衛生学会・産業疲労研究会撰の「自覚症しらべ」、HerbertらのVisual Analogue Scale (VAS)、フリッカー値、4選択反応時間テスト、心的回転テスト、論理推論課題テスト、ヴィジランステストを課した。また実験期間中、直腸温、心拍変動は連続的に測定し、仮眠取得時には脳波(C_3-A_2,C_4-A_1)、眼電図、心電図、筋電図(頤筋部)を測定した。これまでの解析結果から、直腸温、心拍数、フリッカー値などの生理指標は、E条件の仮眠取得後、N-N条件に比べ、3時間程度高い値を維持したの対し、M条件、L条件の仮眠取得後では、持続的な変化はみられなかった。「自覚症しらべ」とVAS値などの心理指標も、E条件の仮眠取得後の眠気、疲労の訴えが、他条件に比べ、低くなる傾向を示した。したがって、1時間仮眠の場合、夜勤前半に取る仮眠が、覚醒水準維持に効果的であることが推察された。現在、仮眠時脳波解析から仮眠の質と心理指標や行動指標との関連性も含めて、今後詳細に検討していく予定である。
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