研究概要 |
本研究の目的は、地域高齢者を対象とした縦断研究および介入研究により、高齢者が寝たきりとなる過程を解明するとともに、老化予防介入プログラムが地域高齢者の各種健康指標に及ぼす影響を明らかにすることにあった。まず、秋田県南外村の65歳以上の自立高齢者601名を6年間追跡し,BADLおよびIADL障害の新規発生の予測因子を明らかにした。BADLの障害では身体・医学的要因の関与が強かったが、IADL障害では心理・社会的要因の関与も重要であった。両者に共通する予測因子は、年齢、就労状況、睡眠時間、健康度自己評価、知的能動性および社会的役割、歩行能力などの体力水準、咀嚼力、入院歴、血清β_2-microglobulinであった。次に、新潟県与板町の65歳以上の地域高齢者1,544人を2年間追跡し、移動能力で分類された二つのタイプの閉じこもり(タイプ1、2)が活動能力の変化に及ぼす影響や、閉じこもりの新規発生の予測因子を明らかにした。タイプ2閉じこもりの、活動能力障害の新規発生に対する相対危険度は、歩行障害2.30(95%CI,1.14-4.61)、IADL障害2.85(同1.20-6.82)、ADL障害1.63(0.87-3.06)、認知機能障害3.05(1.06-8.78)であった。タイプ1発生の予測因子は身体・心理的要因(歩行機能、認知機能など)が、タイプ2発生のそれは心理・社会的要因(ソーシャルネットワーク、認知機能など)があげられた。最後に、秋田県南外村の高齢者約1,400人を対象として、栄養と運動の複合プログラム(老化予防)による介入事業を1年間展開し、対象者全体における介入前後の推移および集中介入群(107人)と一般介入群(377人)との比較を行った。その結果、運動習慣の定着、肉類や油脂類の摂取頻度の改善、血液学的栄養指標の改善、体力(歩行速度など)の維持、抑うつ度の改善などの介入効果を確認した。本研究により、高齢者の生活機能障害が老化に伴う心身機能(認知、咀嚼、歩行機能など)の低下や生活像(閉じこもり)により大きく影響をうけていることや、老化に伴う心身機能の低下や生活像は、外部からの働きかけによるライフスタイルの修正で予防や改善が可能であることが明らかとなった。
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