研究概要 |
本研究費補助金は平成14年後半に追加採択されたため,現在機器設置が終了し,ようやく稼動し,データが出始めた段階にある。 1)イオンクロマトグラフィー装置の立ち上げ:今回の研究では人体試料中のなるべく多くの無機毒物の検出同定法を確立し,無機毒物による中毒事件・事故に備えることを目的としている。われわれは既に亜硝酸エステルを吸入した場合に血中に無機亜硝酸やその酸化物である無機硝酸が出現することを経験しているため,実験の手始めとして,ヒト血中亜硝酸と硝酸の分析を試みながらイオンクロマトグラフィー装置の立ち上げを行った。当教室に導入されているイオンクロマトグラフィー装置はオートサプレッサー方式で,安定性に優れ,バックグランドが低く,その分検出能力(感度)が上昇する。しかも,本装置は内径2mmのマイクロボアカラムに対応できるようポンプやチューブ全体の容量が最小限に抑えられ,さらに高感度分析が期待できる。 2)ヒト血中亜硝酸・硝酸の分析:ヒト健常人の血液に亜硝酸ナトリウムと硝酸カリウム各1ug/mLを添加し混和した。それに限外濾過法による除タンパクを施し,得られた濾液を試料として,分離カラム内径2mm IonPacAS15を用い,移動相は38mM NaOH溶液を使用し,イソクラティックモードで検出を試みた。ところが,亜硝酸出現部のごく近傍に大きなCl^-イオンが出現し,亜硝酸のピークを妨害した。そのためフッ化銀や酢酸銀を加えCl-イオンを除去することを試みている。さらにイソクラティックモードだけでなく,各条件のクラジエントモードで,各ピークの分離条件を検討しているところである。 3)ESRならびに原子吸光分析による無機物質の検出:ラット組織中の鉄,マグネシウム,亜鉛を原子吸光分析法によって定量する詳細を設定した。また銅はジエチルジチオカルバメートと錯体を形成させた後にESR分析したところ好結果を得ている。さちに亜硝酸検出法として,溶液中の亜硝酸を0.1Mのアスコルビン酸で還元し,NOとし,有機層中の鉄にトラップし,ESRによって定量する新しい手法も開発しつつある。
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