研究課題/領域番号 |
14370156
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
法医学
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
中園 一郎 長崎大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 教授 (30108287)
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研究分担者 |
池松 和哉 長崎大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 講師 (80332857)
津田 亮一 長崎大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 講師 (20098875)
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研究期間 (年度) |
2002 – 2003
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キーワード | 法医剖検脳 / 乳幼児突然死 / 窒息 / ORP-150 / 乳幼児突然死症候群 |
研究概要 |
ストレス蛋白は、生体がストレスに暴露されたときに合成、誘導されるの蛋白質の総称である150-Kdoxygen regulated protein(ORP-150)は、ストレス蛋白に分類され、低酸素時のみに小胞体に大量に誘導される。我々はこのORP-150の特徴に着目し、乳幼児剖検脳(肺炎:7例、SIDS:11例)における発現様態について免疫組織学的手法を用いて検討した。ORP-150発現細胞数(発現数)についてクラスター分析を行ったところ、3群に分類された(仮にA群、B群、C群と称す)。以下に各群での発現数と標準偏差を記す:A群66.75 +/- 3.44 (6例)、B群39.50 +/- 2.52 (6例)、C群16.00 +/- 2.92 (6例)。A群の死因は全例SIDSであり、B群の死因は全例肺炎であった。C群の死因は5例がSIDSであり、1例が肺炎であった。ORP-150発現は低酸素のみによって誘導されることから、ORP-150発現数は脳における虚血及び低酸素状態の相違を反映することが推定される。今回の検討でSIDS例が発現数の少ない群(C群)と多い群(A群)の2群に明確に分類された。現在、呼吸中枢の未熟による死がSIDSの一原因と考えられているが、A群のSIDS6例はORP-150の発現数が多いことから、生前の低酸素状態を反映していることが示唆され、呼吸中枢の未熟により死亡したものと考えられた。従って、乳幼児突然死例におけるORP-150の検討は有用な手段になるものと考えられる。また、同様の方法を用いて法医剖検脳(気道内異物による窒息死(溺死を含む):9例、凍死:5例、ショック死:5例、中毒死:6例、心臓突然死:7例)における発現様態を検討した。重回帰分析を行ったところ、年齢依存性が有意であった(傾き:0.384、P=0.039)。このために年齢の影響を考慮して各死因を比較するために共分散分析を行った。さらに多重性を考慮してボン・フェローニの多重比較法により、有意性の検討を行った。以下に各死因における発現数の年齢修正平均と年齢修正平均誤差を記す:心臓突然死例16.23±7.37、窒息死例57.51±6.34、凍死例84.74±9.03、中毒死例46.68±6.70、ショック死例24.84±8.05。その結果、心臓突然死例は窒息死例、凍死例、中毒死例に比して有意に発現数が少なく、また、ショック死例でも窒息死例、凍死例に比して有意に発現数が少なかった(いずれもp<0.005)このようにORP-150の現数は年齢依存性があり、また、死因によって著しい差異が認められた。死因別におけるORP-150の発現様態の差異は、各死因における死へ至る過程及び時間、即ち脳における虚血及び低酸素状態の相違を反映しているものと推察される。
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