研究概要 |
1.われわれは、これまで、Fcγ受容体IIb遺伝子(FCCR2B)に新たな多型I232Tを見出し、日本人において、232T/T遺伝子型が全身性エリテマトーデス(SLE)と関連すること、3A-176Fアリルも、これと独立にSLEと関連することを報告した。本年度は、タイおよび中国集団における検討を加えた。タイ集団では、2B-232T/Tおよび3B-NA2/2遺伝子型の、中国集団では、2B-232T, 3A-176Fの有意な関連が検出された。上記三集団における結果を、メタアナリシスの手法を用いて統合したところ、2B-232T, 3A-176F, 3B-NA2の、統計的に高度に有意な関連が検出され、うち、少なくとも2B, 3Aは一義的な関連であることが示唆された。一方、米国在住白人集団では、2B-232Tのアリル頻度は少なく、SLEとの有意な関連は検出されず、2A-131Rアリルの有意な関連が見出された。以上の結果、2B-232Tは、アジア集団に共通のSLE感受性遺伝子であるが、米国白人集団における感受性遺伝子ではないと結論された。 2.NKG2A, NKG2C, CD94の多型解析を施行し、NKG2Aに11個所、NKG2Cに4個所、CD94に1個所の多型を検出した。関節リウマチ(RA)、SLEとの統計学的に有意な関連は検出されなかった。解析の過程で、NKG2C遺伝子欠損ハプロタイプの存在を見出し、そのbreakpointを、NKG2A遺伝子の1.5-1.8kbテロメア側に限局化した。この情報をもとに、NKG2C欠失ハプロタイプの遺伝子タイピング法を確立した。欠失ハプロタイプ頻度は、日本人一般集団で20.2%、オランダ人で20.0%、ホモ欠失者は、それぞれ4.1%, 3.8%の頻度で存在した。以上の結果から、NKG2C欠失は、少なくとも生存や生殖に重大な支障をきたすことはないことが示唆された。
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