研究概要 |
1)これまでにアジア集団における全身性エリテマトーデス(SLE)感受性との関連を報告してきたFCGR2Bの膜貫通領域多型Ile232Thrについて、内在性FCGR2B欠損ヒトB細胞を用いた機能解析を試みた。SLE関連232Thrアリル導入細胞では、232Ile導入細胞と比較して、B細胞受容体刺激による細胞内Ca^<2+>濃度上昇、PLCγ,Aktリン酸化の増強など、B細胞の活性化、生存シグナルの増強が観察された。一方、B細胞の膜脂質ラフトへのFcγRIIb蛋白の局在とリン酸化の低下、SHIP動員の低下が観察された。これは、SLEにおけるB細胞の過剰な活性化と整合性を持つ結果と考えられた。 2)HLA-DRB1 shared epitope陰性群において関節リウマチ(RA)と関連する抑制型受容体LILRB1遺伝子のハプロタイプについて機能解析を加えた。このハプロタイプは、プロモーター多型と、HLA-class I結合ドメインの複数のアミノ酸置換を含んでいたため、各ハプロタイプ産物に相当する組換え蛋白を作製し、結晶構造、HLA-class Iとの相互作用を解析したが、顕著な変化は見られなかった。一方、RA関連ハプロタイプでは、リンパ球、単球表面におけるLILRB1発現強度の低下が認められた。以上の結果から、このハプロタイプは、LILRB1の発現低下を介して、RA感受性に関連することが示唆された。 3)日本人顕微鏡的多発血管炎(MPA)において、HLA-DRB1^*0901-DQB1^*0303ハプロタイプが関連することを見出した。このハプロタイプはアジア集団では頻度が高いが、ヨーロッパ系集団にはほとんど存在しないため、MPAの疫学の集団差に関連する可能性が示唆された。また、KIRとそのリガンドであるHLA-B,Cの組み合わせの解析により、NK細胞やT細胞の抑制の強い遺伝子型がMPA発症リスクを上昇させる可能性が示された。
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