研究概要 |
本研究は、(1)消化器癌病態の個性診断として、p53遺伝子変異や変異タンパク質の分子診断デバイスを開発すること(診断法開発)と,(2)p53遺伝子導入による消化器癌の遺伝子治療法改良や薬剤による変異p53タンパク質の機能回復剤探索のためのデバイスを癌治療に応用すること(治療法開発)を目的にした。その結果、(1)出芽酵母による網羅的p53変異ライブラリーの機能評価については、PNAS 100,8424-8529,2003に詳細を記した。この論文では、p53変異と機能、構造相関を明らかにした。(2)網羅的変異ライブラリーのスクリーニングにより、多くの温度感受性p53変異を単離した結果は、JBC279,248-355,2004に詳細を記した。この論文では、温度感受性p53変異と構造相関を明らかにし、構造修飾による変異p53の機能回復の可能性を示唆した。(3)網羅的変異ライブラリーのスクリーニングにより、腫瘍で高頻度に報告されている変異p53のsecond-site suppressor変異を単離した。この論文では、変異p53の機能を他の変異p53を発現することにより回復させうることを示し、構造修飾による変異p53の機能回復の可能性を示唆した。(4)消化器癌新規の遺伝子治療法を目指し、大腸癌・胃癌細胞株において野生型p53よりも強いアポトーシス誘導能をもつ5種類の新規1アミノ酸置換型'super p53'を発見した。(5)アミノ酸置換型変異p53タンパク質の機能を回復する小分子化合物(機能回復剤)を探索するため、候補薬剤のin silicoスクリーニングにより候補薬剤を複数発見した。
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