研究概要 |
膵癌(PC)患者38例、膵管内乳頭腫癌(IPMN)患者18例、慢性膵炎(PC)患者18例を対象とし、内視鏡的に採取した膵液よりDNAを抽出し、methylation speciffic PCR(MSP)法および一部real-time PCRによる定量的MSP法を用いてppENK(preproenkephalin),SARP2(Secreted apoptosis related protein 2),CLDN5(Claudin5),NPTX2(Neuronal pentraxin II)の各遺伝子につき、メチル化の有無につき検討し、膵癌診断における有用性を検討した。なお、IPMN18例のうち手術、画像所見より7例は良性、11例は悪性と診断された。 ppENKはPC27例中14例(52%)、IPMN15例中4例(27%)、CP13例中1例(8%)でメチル化を認め、PC患者ではCP患者に比べ有意にメチル化の頻度が高かった。また、SARP2ではそれぞれ32例24例(78%)、20例中9例(45%)、19例中2例(11%)、CLDN5ではそれぞれ33例中10例(33%)、14例中7例(58%)、14例中3例(21%)、NPIX2ではそれぞれ31例中24例(77%)、16例中10例(63%)、13例中6例(46%)でメチル化を認め、SARP2ではPC患者とIPMN患者はCP患者に比し、NPTX2ではPC患者はCP患者に比し、有意にメチル化の頻度が高かった。なお、いずれの遺伝子についてもIPMNの良悪性別ではメチル化の頻度に有意差は認めなかったが、SARP2とNPTX2では良性群に比し悪性群で高い傾向がみられた。 以上の結果より、膵液におけるppENKとSARP2のメチル化は比較的癌特異性が高く、PCの遺伝子診断法として有用と思われる。また、IPMNの良悪性の鑑別に関してはSARP2とNPTX2のメチル化が期待できるものと思われる。
|