全世界で20億人以上、日本国内でも6000万人以上のH.pylori感染者が存在する。 H.pylori感染症は様々な上部消化管病変を惹起し、なかでも日本人に好発する胃癌の病原因子であることが疫学的に証明されている。感染者の臨床病型、その予後の推定に関して、感染菌株の遺伝学的背景の異議付けに関して、様々な報告があるが、統一的に説明できる知見は未だに得られていない。その理由は、疾患予後には感染宿主の様々な生物学的反応が関与しているがそれを、定量的に解析する方法が不明であったからである。我々はヒト胃に於ける感染局所の宿主免疫反応を解析し、マウスのH.pylori感染モデルと比較検討した。すなわち胃粘膜におけるH.pyloriの定着制御に炎症細胞浸潤が必要であり、それらは抗原感作されたTリンパ球が制御しているため、感染局所において宿主の免疫・炎症反応の質的・量的反応の差が、感染胃粘膜上皮の再生・分化に如何なる影響を及ぼすのか、定量的に評価できる疾患モデルを作成した(BBRC 2004)。更に、感染者の胃粘膜生検より得られた浸潤リンパ球の解析から、慢性胃炎に留まる患者と十二指腸患者を合併する患者では、局所のTh反応に差があることを見いだした(Scand J Gastroenterol 2005)。即ち、H.pylori感染胃炎の予後決定に関おいてH.pyloriに特異的な宿主の免疫反応の量的・質的差違により、疾患予後が異なることを、明らかにした。
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