膵臓および消化管において広く発現している増殖因子であるRegenerative gene(Reg)蛋白の消化管、特に腸管における粘膜の形成および修復過程における役割の検討を行っている。対象としては、際とメガロウイルスプロモーターを含むRegトランスジェニックマウス、Regの高発現をさせたトレフォイルファクターのプロモーターを有するRegトランスジェニックマウス、そしてRegをノックアウトしたRegノックアウトマウスを用いた。まずRegトランスジェニックマウスでは胃粘膜上皮の増殖の亢進と過形成は認められたが、小腸、大腸上皮の変化は観察されなかった。一方、Regのノックアウトマウスでは、小腸、大腸上皮の増殖能の低下、Villiの長さは正常であるがVilli単位長あたりの上皮細胞数の減少、上皮細胞間の接着因子の発現低下が認められた。一方、増殖細胞をパルスラベルし、その移動速度を検討したところ上皮細胞数の減少があるにもかかわらず、上皮細胞の移動速度は正常であった。次いでインドメサシンの皮下投与、DSSの経口投与によって消化管に病変を形成させ、その後の上皮傷害の治癒速度の検討を行ったところ、インドメサシンによる胃粘膜病変・小腸の潰瘍病変およびDSSによる大腸の上皮のびらんの治癒速度は、Regの両方のトランスジェニックマウスで促進されており、Regのノックアウトマウスでは遅延していた。さらに、上皮損傷発生時の上皮細胞の増殖は、Regトランスジェニックマウスではコントロール群に比べて亢進し、Regノックアウトマウスでは低下していた。次いで、Reg発現ベクターをcos7細胞に導入し、そのconditioned mediumを精製することによって得たrecombinant Reg粘膜病変の治癒に及ぼす影響を検討してみた。recombinant Reg蛋白を毎日直腸内に注腸投与するとRegノックアウトマウスのDSS大腸病変の治癒が促進され、上皮細胞の増殖もコントロール群より亢進した。一方、Regトランスジェニックマウスに投与しても明らかな変化は見られなかった。このような結果よりRegはマウスの腸管粘膜の再生に関与しており、炎症性腸疾患の治療に利用できる可能性があると考えられた。
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