TLRとMox1オキシダーゼを介する消化管粘膜の自然免疫応答と発がんの分子基盤

2002 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 14370184
• 研究機関: 徳島大学
• 研究代表者: 六反 一仁 徳島大学, 医学部, 助教授 (10230898)
• 研究分担者: 高橋 章 徳島大学, 医学部, 講師 (90304047)
• キーワード: Toll様受容体 / NADPH oxidase 1 / 消化管粘膜上皮細胞 / 活性酸素 / 自然免疫応答 / 発がん / ヘリコバクタ・ピロリ菌 / フラジェリン

研究概要

代表者は、胃粘膜上皮細胞とヘリコバクター・ピロリ菌の相互作用の研究から、消化管粘膜固有の自然免疫応答と発がんを制御するあらたな機構として、TLRファミリーを介する新規NADPH oxidase 1(Nox1)の活性化と、活性酸素依存性のNF-κBの活性化経路を見いだした。胃表層粘液細胞のNox1 oxidaseは、LPS-TLR4シグナルを介して誘導され、マクロファージに匹敵する大量のO_2^-を産生する。一方、腸上皮細胞は、flagellin-TLR5シグナルを介してNox1 oxidaseが活性化される。このTLRファミリーを介する消化管粘膜上皮細胞のNox1活性化は、活性酸素依存性の消化管粘膜の自然免疫応答と発がんの経路として極めて重要な役割を果たしている。
これらの仮説をもとに研究を進め、本年度は、腸上皮細胞に発現するp67-phoxバリアントを特定した(BBRC,2002)。さらに重要な発見として、ゲノムデータベースより新しいp47-phoxアイソザイム(p47-phoxβと命名)をクローニングした。このp47-phoxβはTLR4シグナルによってはじめて胃粘膜細胞に発現し、LPS-TLR4によるNox1 oxidaseの活性化に必須の因子であることを見いだした。この新しい知見から、TLRとNox1 oxidaseによる消化管粘膜固有の感染応答にp47-phoxβが極めて重要な役割を果たす可能性を見いだす事ができた(論文投稿中)。
また、大腸粘膜上皮細胞のNox1 oxidaseの分子基盤を明らかにし、フラジェリンによるTLR5を介したNox1活性化の分子基盤についても明らかにすることができた(論文投稿中)。
このように、本年度はこれまでの研究成果をもとに、極めて重要な新しい知見を得ることが出来た。

研究成果

• [文献書誌] Oikawa K, et al.: "Dioxin stimulates synthesis and secretion of IgE-dependent histamine-releasing factor"Biochem. Biophys. Res. Commun.. 290. 984-987 (2002)
• [文献書誌] Tsutsumi S, et al.: "Gastric irritant-induced apoptosis in guinea pig gastric mucosal cells in primary culture"Biochim. Biophys. Acta. 1589. 168-180 (2002)
• [文献書誌] Oda H, et al.: "Geranylgeranylacetone suppresses inflammatory responses and improves survival after massive hepatectomy in rats"J. Gastrointest. Surg.. 6. 464-472 (2002)
• [文献書誌] Nikawa T, et al.: "Effects of a soy protein diet on exercise-induced muscle protein catabolism in rats"Nutrition. 18. 490-495 (2002)
• [文献書誌] Yoshida L, et al.: "Expression of a p67^<phox> homolog in Caco-2 cells giving O_2^--reconstituting ability to cytochrome b_<558> together with recombinant p47^<phox>"Biochem. Biophys. Res. Commun.. 296. 1322-1328 (2002)
• [文献書誌] 六反一仁, 他: "ストレス評価用DNAチップを用いたメンタルジェネテイクスの展開"Bio Industry. 19. 19-24 (2002)