研究概要 |
NADPH oxidase (Nox)/Dual oxidase (Duox)ファミリーのなかで、Nox1はヒトの組織の中で大腸粘膜に構成的に発現している。また、モルモット初代培養胃粘膜細胞はNox1を発現している。ヘリコバクター・ピロリ菌のLPSはNox1を活性化して多量のスーパーオキシドを産生させる。この分子機構として、LPSがNox1に加え、p47-phoxの新規ホモログNox organizer1(Noxo1)の遺伝子発現を誘導すること、さらに、PI3キナーゼを介してRac1の活性化を誘導すること、を見出した(Am J Physiol,2005)。さらに、ヒトの胃がん細胞では、Nox1とNOXO1が特異的に共発現することを見いだした。 一方、大腸上皮細胞(T84細胞)においては、flagellin-TLR5を介してNox1が活性化されること、また、p47-phoxとp67-phoxの新規ホモログであるNOXO1とNOXA1がT84細胞のNox1の活性化に必要であることを報告した(J Immunol,2004)。さらに、INF-γがT84細胞のNox1遺伝子の転写を活性化することを発見し、その分子機構について検討した。Nox1遺伝子の上流-3.8kbpのGASエレメントがIMF-γによるNox1遺伝子の転写活性化に必須であることを証明した(論文投稿中)。大腸では、adenoma-carcinoma sequenceに従ってNox1の発現が増大すること、大腸がん細胞では、分化に伴いNox1が発現すること、Nox1由来の活性酸素によるNF-κBの活性化とがん細胞の異常増殖との関連を示した(Cancer Lett 2005)。 このように、Nox1由来の活性酸素種は消化管粘膜固有の自然免疫応答と炎症に重要な役割を果たす可能性を示し、この分野の先駆的な研究成果を発表した。
|