研究概要 |
1.目的 種々の癌や前癌病変におけるras遺伝子変異や細胞増殖における活性化rasの関与が報告されている。本研究では、ras蛋白の活性化に必須である翻訳後prenylationを阻害するFarnesyltransferase阻害剤やGaranylgeranyltransferase阻害剤(GGTI)の大腸癌予防薬としての有効性を検討する。 2.方法と結果 (1)FTIのACF、ポリープに対する抑制効果 F344ラットに大腸発癌剤であるdimethylhydralazine (DMH,10mg/kgx2)を投与し、連日FTI27620〜70mg/kgを腹腔内投与したところ、8週後のACF数は対照群より有意に減少した。同様の投与方法で24週後にポリープ数を検討したところ有意な減少を認めた。 (2)GGTIのACF、ポリープに対する抑制効果 (1)の方法によりラットにDMHを投与し、連日CGTI10〜30kg/kgを腹腔内投与したところ、8週後のACF数、24週後のポリープ数はいずれも対照群に比べく少ない傾向にあった。 (3)FTI及びGGTI併用投与によるACF、ポリープに対する抑制効果 (1)の方法によりラットにDMHを投与し、連日FTI276及びGGTIを併用投与したところ、8週後のACF数は有意に減少し、FTI単独投与群、GGTI単独投与群よりも有意に減少した。同様に、24週後のポリープ数もFTI単独投与群、GGTI単独投与群よりも有意に減少した。 (4)FTI及びGGTIの毒性に関する検討 ラットの化学発癌にけるACF及びポリープの抑制に必要なFTI及びGGTIの投与量では、各臓器に病理組織学的に異常所見を認めなかった。同様に、血液生化学検査でも異常所見を認めなかった。 3.結論 FTI及びGCTIは、ラット大腸化学発癌におけるACF及びポリープを抑制する効果を有すること、さらに、両者の併用投与の相加効果が認められ、これらの化合物の大腸発癌予防薬としての有用性が示唆された。
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