研究概要 |
1.インターフェロン治療を受けるC型慢性肝炎患者3例でインターフェロン治療開始投与開始後4週後に4週間の投与休止期間を設けることによるHCV蛋白全体に対する細胞障害性T細胞(CTL)応答への影響を検討した.対照として4例で揖投与休止期間を設けず,CTL応答の経時的変化を検討した.C型慢性肝炎患者のHCV蛋白全体に対するCTL応答は健常対照群と比べ,差がないか軽度上昇であった.CTL応答が高くない症例ではCTL活性はインターフェロンのウイルス量の低下に伴い,一旦上昇し,ウイルス陰性が続くと再び低値に戻った.一方,治療開始前にCTL応答が比較的高かった症例はインターフェロン投与1か月後にはCTL応答は低下し,3か月後に高値に戻ったのちに再び低下した.治療休止を行った3例中2例は治療前CTL活性は高く,インターフェロン開始4週後にはCTL活性は抑制されたが,治療休止によりウイルが再増加すると共にCTL活性は上昇し,CTL応答の増強が認められた.増強したCTL活性はウイルス陰性が長く続くと低下した. 2.C型急性肝炎患者5例と感染が最近のC型慢性肝炎患者4例の末梢血CD8陽性T細胞を日本人に多いHLA-A24への結合モチーフを有する合成HCVペプチドで刺激し,インターフェロンγ産生を指標にすることにより5例の患者で11種類の新たなHCV特異的CTLのエピトープを同定した.しかし,HLA-A24拘束性HCLのエピトープはこの内の1種類だけであり,HLA-A24拘束性CTLエピトープには免疫学的に優位な抗原エピトープが存在しない可能性が考えられる.現在,HCV蛋白全体をカバーし,10アミノ酸ずつオーバーラップする20アミノ酸のペプチドでHCV特異的CTLの新たなエピトープを更に探索している.
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