研究概要 |
C型肝炎ウイルス(HCV)感染は高頻度に持続感染に移行し,慢性肝炎,肝硬変と進展し,肝癌を生じる.新たなHCV感染は医療器具のディスポーザブル化,血液製剤のHCV検査の導入により激減し,インターフェロンをベースにした治療によりC型慢性肝炎患者においてウイルスの排除も可能になった.しかし,治療に反応しない患者も依然として存在し,新しい治療戦略の開発が必要である.その一つとしてHCV感染細胞を認識・傷害し,ウイルス排除に働く細胞障害性T細胞(CTL)の応答を利用した治療法の可能性がある.私達は,まずHCV全体に対するCTL応答を評価する方法を開発した.この方法を用いてC型慢性肝炎患者のインターフェロン治療時のHCV特異的CTL応答の経時的変化を検討し,ウイルスの減少に伴いCTL応答は低下するが,一時的に治療を中断すると,ウイルスの再増加に伴いCTL応答が増強することを明らかにし,HCV排除にCTLが重要な役割を果たしていることを証明した.また,将来のペプチドワクチンへの利用を目的に,HLA-A24への結合モチーフを有する合成HCVペプチドと全HCV蛋白をカバーする合成ペプチドを用いて,特異的なCTLは抗原刺激によりIFN-γを産生することを利用したELISpotアッセイにより,16種類の新たなHCV特異的CTL抗原エピトープを同定した.更に,HCV抗原ペプチド-HLA-A24-Igダイマーを作製し,C型慢性肝炎患者末梢血中に存在するHCV特異的CTLは一般に活性化の程度が低く,分化度は様々であり.CTL応答が抑制されていることを明らかにした.
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