研究概要 |
インターフェロン(IFN)治療を実施していないC型慢性肝炎患者20例を対象に,direct sequencing法によりosteopontin遺伝子のpromoter領域の塩基配列を解析し,nt-155,-443,-616,-1,748の4ヶ所にSNPsを見出した。そこで,同様にIFN未施行のC型慢性肝炎患者156例を対象にinvader法でこれらSNPsのalleleを同定し,全176例で各SNPsと肝炎活動性との関連を検討した。nt-155,-616,-1,748の3SNPsは,D'値およびr^2値が0.937以上であり,強い連鎖不均衡を呈していた。一方,nt-443のSNPに関しては肝炎活動性と関連があり,血清ALT値が2年間以上にわたって正常値の症例はT/Tが13%,C/Tが75%であったのに対して,80IU/L以上に上昇した症例ではT/Tが44%,C/Tが40%であった。このSNPは登録されていない新たなものであり,肝炎活動性を規定している可能性がある。 次いで,IFN治療を実施したC型慢性肝炎76例を対象に,上記SNPsと治療効果との関連を検討した。nt-1,748のalleleがG/A, G/Gの症例のSVR率が82%であり,Aの症例における43%に比して有意に高率であった。1b,高ウイルス量の症例に限定してもこの差異は認められた。また,nt-443がT/Tの症例はSVR率が86%であり,C/T, C/Cの症例における53%より有意に高率であった。1b,高ウイルス量でも同様であった。nt-1,748がG/A, G/G, nt-443がT/Tの両者を満たす症例はすべてSVRとなった。 以上より,osteopontin遺伝子のpromoter領域のSNPsは肝炎活動性を規定するのみでなく,IFN治療の効果を予測する際にも有用であると考えられた。
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