研究概要 |
私達が発見し、現在医療保険で間質性肺炎の診断と疾患活動性の血清マーカーとして承認されているKL-6が特発性間質性肺炎の予後因子としてどの程度有用であるかどうかを検証するための臨床研究を開始した.具体的には,まず,広島大学医学部附属病院第2内科の関連病院20施設に間質性肺炎の診療状況をアンケート調査した.その結果,13施設がかなりの数の特発性間質性肺炎患者を診療中であり,後向き研究に協力の意向であった.更に,中国四国地方にある大学病院呼吸器内科教室に,本研究への参加の有無を問いかけている.これらの施設でまず,後向き研究を行う.その後,これらの施設の中から,予後因子としての血清KL-6値の意義に関する研究を開始するスケジュールである. また,KL-6分子の細胞生物学的意義の研究に関しては,本年度は,KL-6の発現調節に関する検討を行った.肺癌細胞株ABC-1細胞に対して,サイトカイン(IFN-g,TNF-a,IL-4,IL-5,IL-13,HGF,IL-2)を添加し,KL-6分子の培養上清中への産生を検討した.ABC-1細胞に対しては,TNF-aのみが発現の増強作用を示した.また,その他の肺癌細胞株6種に対しても上記サイトカインのKL-6産生刺激作用を検討したが,ABC-1,RERF-LC-OK,VMRC-LCD,VMRC-LCP,A549,PC9細胞はいずれも単独のサイトカインでは産生増強作用を示さなかった.現在,正常肺の器官培養系の作成を行っており,生体内での粗織を保持したままの臓器内でKL-6の産生に及ぼす各種サイトカイン及びサイトカイン混合液の影響を検討中である.更に,本年度購入した凍結乾燥機とHPLCカラムを使用して,精製KL-6分子を採取したので,この精製分子の各種細胞へ対する細胞学的影響を検討中である.
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