研究概要 |
1.肺組織検体の標本を用いてSmad7,リン酸化Smad2/3の発現を免疫組織染色で評価した結果、リン酸化Smad2/3の発現は、肺線維化肺において極めて強く、またSmad7の発現は、低下していた。Western-blottingにおいても同様の所見を得た。Realtime PCRを用いた転写レベルの評価では、Smad7の発現はSmad2,Smad3と変わらなかった。これは、前年度おこなったSmad7の転写制御領域のmutationが存在しなかったことを加味すると肺線維症肺では、Smad7の転写がプロモーター領域のmethylation或いはSmad7蛋白のdegradationが亢進していることが推測された。 2.臨床検体から得られた肺線維芽細胞を使った培養実験 i.リン酸化Smad2/3,Smad7の発現は、肺組織検体を使った免疫組織染色、western-blotの結果と一致した。 ii.コラーゲンゲルを使った線維芽細胞収縮力をみた細胞生理学的検討では、肺線維症のほうが非線維症肺のものより強い収縮力をしめし、またγ-IFN存在下においても収縮力は低下しなかった。Smad7遺伝子導入を行うと収縮力の抑制がかかった。 iii.肺線維症肺からの線維芽細胞は、TGF-β非存在下においてもα-SMA、collagen発現を認め、またγ-IFN存在下においても発現は低下しなかった。一方、Smad7を遺伝子導入を行ったところα-SMA、collagen発現は低下した。 以上から肺線維症肺における線維芽細胞は、非線維化肺の線維芽細胞とことなりmyofibroblast様の性格をおびていることが明らかになった。
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