研究概要 |
脳アミロイドアンギオパチー(CAA)の分子病態を解明し、それに基づき、臨床診断法の確立および予防・治療法を開発することを目的に以下の研究を行った。 (1)CAA臨床例の解析 CAAと脂質代謝に関与するパラオキソナーゼ、アミロイドβ蛋白(Aβ)分解酵素であるネプリライシン、サイトカインTGF-β1の遺伝子多型との関連を検討したところ、CAAとネプリライシン遺伝子多型、CAAとTGF-β1遺伝子多型の間に関連を認めた。これはAβ分解酵素の多型がCAAに影響することを示唆する初めての報告である。これまで、アルツハイマー病(AD)およびアポリポ蛋白EE4がCAAのリスクであることが報告されてきたが、TGF-β1はnon-AD, non-E4例で、CAAと強く関連しており、TGF-β1遺伝子多型がnon-AD, non-E4患者におけるCAAのリスク診断に有用であることが示唆された。また、わが国におけるCAAの実態を解明する目的で、CAAに関する全国疫学調査を初めて実施し、CAAに関連する脳出血が過去5年間に755例存在することなどを明らかにした。 (2)試験管内アミロイド線維形成・分解系による実験モデルの構築とそれを用いた予防・治療薬の探索 試験管内Aβ線維形成系を用いた解析で、抗酸化剤NDGA、ニコチン、赤ワイン関連ポリフェノール、クルクミン、クルクミンのアナローグであるローズマリー酸、ビタミンA、タンニン酸がAβ線維形成抑制作用ばかりでなく既成のAβ線維の分解作用を有し、Aβ線維の細胞毒性を有意に軽減することを明らかにした。 (3)CAA動物実験モデルを用いた予防・治療薬の開発 上記のin vitroの系で見出された抗Aβ薬候補のin vivoにおける効果の検討する目的で、Aβ型CAAを呈するトランスジェニックマウスに対し、抗Aβ薬の予防的投与、治療的投与を実施した。現在、その結果を病理学的、生化学的に解析中である。
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