研究課題/領域番号 |
14370206
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
松本 昌泰 広島大学, 大学院・医歯薬総合研究科, 教授 (20192346)
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研究分担者 |
山下 拓史 広島大学, 大学院・医歯薬総合研究科, 助手 (20311813)
片山 禎夫 広島大学, 医学部・歯学部附属病院, 助手 (00211160)
北川 一夫 大阪大学, 大学院・医学系研究科, 助手 (70301257)
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キーワード | 脳梗塞 / 脳虚血 / 神経幹細胞 / 海馬 / シクロオキシゲナーゼ / ノックアウトマウス / 神経細胞新生 |
研究概要 |
平成14年度におけるラット中大脳動脈閉塞モデルおよび4血管閉塞モデルでの海馬歯状回における神経幹細胞の動態、神経細胞新生に関する解析から得られた成果をふまえ、平成15年度は虚血脳における神経幹細胞増殖を規定する因子の一つと考えられるシクロオキシゲナーゼ2に注目して検討を進めた。アラキドン酸代謝酵素であるシクロオキシゲナーゼ2は中枢神経系に発現し、炎症反応における役割以外にもシナプス可塑性や細胞の増殖において重要な役割を果たすことが知られている。マウス一過性前脳虚血モデルにおいて、ラットや砂ネズミ同様に海馬歯状回における神経幹細胞の分裂・増殖の亢進が観察されたが、シクロオキシゲナーゼ2の選択的拮抗薬NS398の投与を行うと神経幹細胞の増殖が抑制された。さらにシクロオキシゲナーゼ2ノックアウトマウスでは、海馬歯状回における虚血後の神経幹細胞増殖および神経細胞新生が著明に抑制された。脳虚血後にシクロオキシゲナーゼ2遺伝子が神経細胞で誘導され、タンパク質の発現が起こることが知られているが、虚血性損傷脳におけるシクロオキシゲナーゼ2の発現は、単に炎症反応としての側面だけではなく、神経幹細胞の分裂・増殖促進作用により神経細胞新生を促進する働きがあることが示された。神経細胞新生促進による神経後遺症の改善を新たな脳梗塞治療法として臨床応用する手段を考える場合に、シクロオキシゲナーゼ2による神経幹細胞の分裂・増殖促進作用は選択肢の一つとなる可能性が示された。
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