研究概要 |
本報告書は、アルツハイマー病に次いで頻度の高い神経変性疾患であり,根本的治療がなく、高齢化社会に伴い大きな問題になっているパーキンソン病の根治治療を目指した基礎研究である。我々は、パーキンソン病の細胞死を抑制する、Apaf-1ドミナント・ネガティブを新たな治療法を開発した(Mochizuki H et al.Proc.Natl.Acad.Sci.USA,2001)。この遺伝子や細胞死を制御できる可能性が期待される遺伝子をウイルスベクターを用いて過剰発現させ、実際の臨床応用するため、前臨床研究としてパーキンソン病モデル動物、特に猿で、安全性および有用性を証明することが本研究の目指すところである。我々の最終目的は、パーキンソン病の進行例で、薬剤の効果がなく寝たきりになった患者さんを、この治療法で改善させることである。我々の確立した治療法は、アデノ随伴ウイルスベクターにより、ミトコンドリアを介する細胞死をApaf-1のCARDドメインを過剰発現することにより抑制する。すでに、MPTPマウスを用いた系で、その細胞死を制御することは、確認し報告した。さらに、今回遺伝子改変モデルを利用して、この系とは全く異なるcaspase 11がパーキンソン病の発症機序に重要な役割をしていることを発見し報告した。パーキンソン病の治療研究において、実際に臨床使用を行うためには、世界的にも猿を用いた研究が必要不可欠である。しかし、猿の実験は大変高価で頻回な実験は困難であるため、マウスやラットを用いた基礎実験を十分に行った。また遺伝子治療や再生医療の基礎研究として対照として虚血モデルにおいても解析を行ったが、変性疾患の解析に非常に有用な結果が得られることができ論文にて報告することができた。猿を用いた研究結果は、筑波霊長類センターにて施行した。行動解析を含め行った。ウイルスベクターを用いた細胞死制御は、マウスやラットと一部異なる結果も得られたため第45回日本神経学会総会にて報告した。今後は、その詳細につき検討中であるが大変興味ある結果がさらに得られると確信している(820)
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