研究概要 |
動脈硬化進展過程には高脂血症を基盤に、炎症因子、特に流血中の単球が関与していることは知られている。しかしリンパ球の関与については未だ詳細に不明な点が多い。NKT細胞は強力なTh1サイトカインIFN-γおよびTh2サイトカインIL-4産生能をもっこと、CD1d分子により提示される脂質を認識するといった特徴から、動脈硬化に関与する可能性が考えられる。NKT細胞が動脈効果に関与するかを検討している。10週齢の雌C57BL/6マウス(WT)とNKT細胞が著減するCD1dノックアウトマウス(CD1d^<-/->)に動脈硬化食(脂肪15%、コレステロール1.25%)を20週間投与した。また著名な動脈硬化を示すことが知られる雌ApoEノックアウトマウスに、8週齢よりNKT細胞を活性化するリガンドとして知られるα-GalCer (GC)、OCHあるいはvehicleを2週間間隔で計3回腹腔内投与し、その1週後に犠牲死させた。動脈硬化病巣面積は、大動脈弁直上より80μm間隔で8連続切片を作製した。血管組織は脂肪染色にて病巣を染色しその面積を算出した。.CD1d^<-/->の動脈硬化病巣はWTと比し有意に小であった(5,627±580 vs 2,292±397μm^2,p<0.05)。またGC投与群の動脈硬化病巣はvehicle群と比べ有意に大であった(34,705±5,908 vs 20,985±2,155μm^2,p<0.05)。OCH投与群の動脈硬化病巣はvehicle群と比べ有意に大であった(28,519±2,822 vs 19,863±1,813μm^2,p<0.05)。各群においては体重およびコレステロール、HDL、中性脂肪など脂質代謝に有意な差を認めなかった。以上よりNKT細胞は動脈硬化促進性に寄与することが示された。今後、動脈硬化を制御する機構、および治療標的分子を明らかにしていく予定である。
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