研究概要 |
プラーク内における血管平滑筋細胞(VSMC)は未分化であり、炎症性サイトカインを分泌し、周辺のVSMCや内皮細胞、リンパ球を活性化することによって炎症の正のフィードバックループを形成する。したがってVSMCの分化・脱分化のメカニズムを解析することは、血管炎症の遷延化の機序を明らかにする上で重要である。本研究では、動脈硬化の進展やプラーク安定性に重要なVSMCにおける、アンキリン反復配列をもつ核内蛋白CARPの機能を解析した。アデノウイルスを用いてCARPをVSMCに過剰発現させるとp53の発現が増加し、VSMCの増殖性が抑制された。未分化型VSMCから分化型VSMCへの変換を促進する因子としてTGFβが重要であり、TGFβはSmadのリン酸化をおこすことは以前から知られていたが、VSMC特異的遺伝子の発現に対するTGFβの作用を詳細に検討した報告はほとんどない。TGFβはSRFの遺伝子発現を転写レベルで増加させた。また、TGFβはCARP遺伝子の発現も転写レベルで増加させた。CARPはSRFによるVSMC遺伝子の転写活性化をさらに促進させた。さらにCARPとSRFは直接に結合することも明らかとした。これまでmyocardin, TCFなどがSRFのコファクターとして同定されているが、CARPが同様の性質を持つことはこれまでに報告がない。CARPが動脈硬化巣に発現する因子であること、SRFは「細胞の増殖」と「細胞の分化」という2つの相反する細胞の運命を調節する転写因子としてこれまで注目されていることを考え合わせると、SRFの調節する機能をCARPが有することの発見の意義は大きい。
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