研究課題/領域番号 |
14370219
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
南野 徹 千葉大学, 医学部附属病院, 助手 (90328063)
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研究分担者 |
高野 博之 千葉大学, 大学院・医学研究院, 助手 (60334190)
小室 一成 千葉大学, 大学院・医学研究院, 教授 (30260483)
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キーワード | テロメア / 細胞老化 / 動脈硬化 / 血管老化 / Ras |
研究概要 |
ヒト培養細胞の分裂能力は有限であり、一定の増殖後、細胞老化とよばれる細胞分裂停止状態となる。これまで細胞老化の個体老化への関与が示唆されてきたが、血管細胞老化が血管の老化、動脈硬化に関与しているかどうかについては明らかでなかった。私達はsenescence-associated β-gal assayという方法を用いて、はじめてヒト動脈硬化巣に老化した血管細胞が認められることを報告した。老化した血管細胞は同一患者から得られた非動脈硬化血管においてはみられなかった。また、これらの老化血管細胞は内皮型NO合成酵素の活性低下、炎症性のサイトカインの発現亢進など、血管機能障害の形質を示していたことから、血管細胞老化が動脈硬化病態生理の新たなメカニズムの一つであると考えられた。細胞老化のメカニズムとして重要な仮説がテロメア仮説である。テロメアは細胞分裂に伴って短縮し、細胞老化を誘導する。私達は、老化血管においてみられるような血管細胞老化と血管機能障害にはテロメアの機能不全が関与しており、またテロメアを付加する酵素であるテロメレースの導入により細胞老化に伴う血管機能障害を抑制することが可能であることを証明した。一方、動脈硬化形成のシグナル経路において、中心的な役割を果たしていると考えられているのが低分子量GプロテインRasである。私達は最近、活性型Rasの導入により培養血管細胞が増殖せずに直ちに老化し(テロメア非依存性)、炎症性の亢進などの形質を発現することを発見した。ヒト動脈硬化巣の老化細胞においてもRasが活性化されており、またラット血管傷害モデルにおいて、傷害血管に活性型Rasを導入すると、血管細胞老化が誘導されるばかりでなく、マクロファージの遊走も促進された。以上のデータより、ヒト動脈硬化巣では過剰な増殖刺激によってテロメア依存性あるいは非依存性の細胞老化が誘導され血管老化に伴う様々な血管機能障害を引き起こしているものと考えられた。
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