研究課題
基盤研究(B)
HVEMはLIGHTと反応してICOS同様にT細胞活性においてポジティブなシグナルを入れる分子である。平滑筋上にはLIGHTの発現が認められる。HVEMの働きをHVEMIgで阻害することで移植心冠動脈内膜肥厚が抑制される。PD_1は逆にT細胞にネガティブなシグナルを入れる副刺激分子であることが知られている。我々の検討では、PD-1のリガンドであるPD-L1の発現は活性化平滑筋上に認められる。抗PD-L1抗体による治療は移植心冠動脈硬化の増強につながったことから、この移植モデルにおいても、PD-1がT細胞の活性化に抑制性のシグナルを入れていることが予想された。HGFは多彩な機能を持つ組織保護作用を有する蛋白である。血管再生機能を持ち、臨床応用が開始されている。心臓における作用については不明な点が多い。我々は拒絶反応や自己免疫性心疾患における役割について検討した。HGFの発現は移植心で亢進し、HGFの投与や遺伝子導入を行うことで、マウス心移植モデルでは免疫寛容が得られることが明らかになった。この免疫寛容はドナーの臓器に特異的である。急性拒絶が回避されたマウス移植心では冠動脈狭窄(慢性拒絶)の進展も著明に抑制されていた。同様な観察はラット自己免疫性心筋炎モデルでも認められた。HGF遺伝子の導入は心筋炎の重症度の抑制をもたらした。特に炎症が起き始めた段階からの投与でも心筋炎の抑制は可能であった。小動物で得た結果を臨床応用するために遺伝子導入の方法、安全性、有効性を示していく必要がある。すでに我々はNFκBデコイ遺伝子の導入が急性拒絶反応および慢性拒絶反応の抑制に有効であることを示してきた。研究期間中にNFκBデコイの導入を冠動脈内に行いその方法論の確立をブタで確認し、ステント留置患者への遺伝子導入をする機会を得た。移植への応用を行うに際して貴重な学術データと経験を獲得することができたと言える。
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