心不全発症において情報伝達の最終到達点である核において共通経路を見出し、そこを標的とした薬物治療を確立することは、心不全の根本的な薬物治療法の開発の為に極めて重要である。GATA転写調節因子とそのco-factorであるp300は心筋細胞肥大の核内情報伝達において中心的役割りを巣たしている。成人心筋においてp300/GATA経路を活性化するために、6キロ塩基のマウスα-ミオシン重鎖遺伝子プロモーターの下流にp300cDNAを組み込み、p300を心節特異的に過剰発現したトランスジェニック動物を作成した。その結果、p300/GATA経路の標的であるエンドセリン-1の発現が亢進し、心不全が引き起こされることを見出した。p300蛋白はHistone Acetyltransferase (HAT)活性を持ち、クロマチンのねじを解除することにより転写調節因子を染色体DNAに結合しやすくすると同時に、転写調節因子をアセチル化しそのDNA結合能や転写活性化能に影響を与える。本年度は、p300蛋白によるアセチル化作用につき検討した。p300蛋白によりGATA因子がアセチル化され、そのDNA結合能が増大すること、フェニレフリンやエンドセリン-1などの肥大刺激が心筋細胞においてGATA因子をアセチル化することを見出した。心筋細胞核内のp300/GATA経路を標的とした薬物治療の開発は、心不全の根本的な治療確立に極めて重要である。
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