心不全発症において情報伝達の最終到達点である核において共通経路を見出し、そこを標的とした薬物治療を確立することは、心不全の根本的な薬物治療法の開発の為に極めて重要である。 GATA転写調節因子とそのco-factorであるp300は心筋細胞肥大の核内情報伝達において中心的役割を果たしている。 平成14年度はp300蛋白によるアセチル化作用につき検討した。p300蛋白によりGATA因子がアセチル化され、そのDNA結合能が増大すること、フェニレフリンやエンドセリン-1などの肥大刺激が心筋細胞においてGATA因子をアセチル化することを見出した。 平成15年度は心臓でp300を過剰発現するトランスジェニックマウスにおいて心筋梗塞後慢性期の左室エンドセリン-1濃度は上昇しリモデリングは促進されることを示した。核内情報伝達機構の詳細な解明は心不全の分子細胞レベルでの解明に非常に有用で治療のターゲットになる可能性も期待できる。今後さらなる詳細な解明により心不全の根本的な治療法が開発されることが期待される。
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