心臓の興奮・伝導・収縮をつかさどるのに重要な蛋白分子の変調により、多種多様な循環器疾患が発症することが明らかとなってきた。このような疾患群のなかで、蛋白分子のうちイオンチャネルやその調節蛋白の異常は、不整脈を起こすこと、さらにこれらの蛋白をコードする遺伝子の変異やSNPが、遺伝性を示す不整脈を惹起することが、次々と判明した。最初の報告は1995年のQT延長症候群におけるNaチャネルとKチャネルの変異であったが、当時よりわれわれは、2次性を含めてQT延長症候群を対象に、遺伝子検索さらに発見できたチャネル遺伝子変異の機能解析をおこなってきた。現在までにQT延長症候群には、少なくとも7っの異なる遺伝型があること、臨床的に多いLQT1-3については、その遺伝型により、臨床像や予後が異なることがわかり、遺伝子検索はテーラーメイド治療として、一躍、注目されている。われわれは、大学の倫理委員会の承認を得て完全匿名化した状態で、患者の末梢血からゲノムを抽出し、PCR/SSCPおよびPCR/dHPLC法で、QT延長症候群やそのほかの遺伝性を有する不整脈における関連遺伝子変異のスクリーニングを行った。また、発見・同定できた変異について、遺伝子組み換え法を用いて、変異クローンを作成し、これを従来、これらの遺伝子を持たない培養細胞に導入して、電気生理学的方法で、機能解析を行った。その結果、遺伝性不整脈の病態解明に寄与する多くに知見が得られた。その内容は、11.研究発表欄に示すように、多数の読者を持つ英文雑誌に、掲載することができた。
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