研究分担者 |
荻原 俊男 大阪大学, 医学系研究科, 教授 (60107042)
大蔵 隆文 愛媛大学, 医学部, 講師 (40260385)
三木 哲郎 愛媛大学, 医学部, 教授 (00174003)
勝谷 友宏 大阪大学, 医学系研究科, 講師 (30311757)
楽木 宏実 大阪大学, 医学系研究科, 助教授 (20252679)
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研究概要 |
高血圧とこれに関連する循環器病の遺伝-環境相互作用の検討を行った.愛媛大学において151例の肥大型心筋症患者からDNA検体を採取した.このうち一回以上の心血管イベントの既往がある者は65名(43%),心血管イベントの既往のない者は86名(57%)であった.アンジオテンシン変換酵素遺伝子多型の頻度はDD,ID,II型おのおの14%,46%,40%であった.心血管イベントの発症はDD型の36%,ID型の32%,II型の58%に認められた.心血管イベントの発症はII型において有意(3.1倍,P<0.01)に高値であった.その他,疫学研究に有用な高血圧・循環器病の臓器合併症の重症度を示す血中マーカーや診断法についても検討した.一方,動脈硬化に深く関わるPDGF受容体遺伝子(PDGF-R)の発現調節に関与するCCAAT/enhancer-binding protein δ (C/EBPδ)の過剰発現トランスジェニックラット(Tg)を作製し,PDGFsに対する細胞増殖能を比較した結果,non-Tg由来の細胞に比べTg由来細胞では基礎レベルならびにPDGFs刺激下における細胞増殖能は,ともに有意に増加していることを見出した.現在,日本人におけるC/EBPδ遺伝子多型の検索を進めており,高血圧および各種循環器病との関連研究を計画している. 今回の遺伝子解析結果から,アンジオテンシン変換酵素遺伝子多型が肥大型心筋症の心血管イベントの発症に関与している可能性が示唆された.また,我々は高血圧・循環器病の原因候補遺伝子を転写因子に絞り,特にC/EBPの研究を進めているが,今回の成績から転写因子C/EBPδの血管壁における新しい役割が証明された.これらの知見をさらに分子疫学的に裏付けることで,テーラーメイド医療の可能性も高まるものと考えられた.
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