動脈硬化発症進展における内皮型NO合成酵素を介すNOとO2-産生のバランスシフト

2003 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 14370227
• 研究機関: 神戸大学
• 研究代表者: 横山 光宏 神戸大学, 大学院・医学系研究科, 教授 (40135794)
• 研究分担者: 井上 信孝 神戸大学, 大学院・医学系研究科, 助手 (10304099) ; 川嶋 成乃亮 神戸大学, 大学院・医学系研究科, 助教授 (10177678)
• キーワード: 内皮型NO合成酵素 / 動脈硬化 / スーパーオキシド / ジヒドロビオプテリン / GTPCH 1

研究概要

昨年度において、apoE遺伝子欠損マウス(apo E-KO)と、内皮型NO合成酵素(eNOS)遺伝子過剰発現マウス(eNOS-Tg)とを交配し、apo E-KO/eNOS-Tgを作製した。このapo E-KO/eNOS-Tgを用いて、血清コレステロール値が1800-2000mg/dlの高度の高脂血症下では、eNOS過剰発現により動脈硬化が促進すること、および、その機序として血管におけるBH4含有量の低下に基づくeNOSの機能異常により、スパーオキシド産生が増加していることが関係することを報告した。
今年度は、まず食餌の変更により、血清コレステロール値が400-600mg/dlの軽度から中等度の高脂血症モデルを作製し、同様の検討を行った。その結果、やはりeNOS過剰発現により動脈硬化が促進することを見出した。更に、高脂血症下ではBH4産生の律速酵素であるGTPCH-1の大動脈における活性が低下していることを見出した。そこで内因性のBH4を増加させる目的にて、GTPCH-1が血管内皮細胞に特異的に過剰発現している遺伝子操作マウス(GTPCH-1-Tg)と、apo E-KO/eNOS-Tgとの交配実験を行った。その結果、GTPCH-1の過剰発現により、血管組織内のBH4濃度の改善とともに、通常のapo E-KOと同レベルまで動脈硬化病変が減少するとの結果を得た。
さらに、このようなにBH4代謝の異常に基づくeNOS機能異常が、動脈硬化以外の血管病変の形成どのように関与しているかを明らかにする目的にて、軽度の高脂血症を有すapo E-KO/eNOS-Tgにおいて、総頸動脈結紮による中枢側血管の内膜・中膜肥厚リモデリングモデルを作製した。そして、eNOS過剰発現により、血管リモデリングが増強するとの結果を得つつあり、現在詳細な検討を行っている最中である。

研究成果

• [文献書誌] Kawashima S, Yokoyama M.: "Dyfunction of Endothelial Nitric Oxide Synthase and Atherosclerosis"Arterioscler Thromb Vasc. (in press). (2004)
• [文献書誌] Namiki M, Kawashima S, Yokoyama M, et al.: "Intramuscular gene transfer of interleukin-10 cDNA reduces atherosclerosis in apolipoprotein E-knockout mice"Atherosclerosis. 172. 21-29 (2004)
• [文献書誌] Kobayashi S, Inoue N, Yokoyama M, et al.: "Interaction of oxidative stress and inflammatory response in coronary Plaque instability : important role of C-reactive protein"Arterioscler Thromb Vasc. 23. 1398-1404 (2003)
• [文献書誌] Kawashima S, Yamashita T, Yokoyama M, et al.: "HMG-CoA reductase inhibitor has protective effects against stroke events in stroke-prone spontaneously hypertensive rats"Stroke. 34. 157-164 (2003)
• [文献書誌] Ejiri J, Inoue N, Yokoyama M, et al.: "Oxidative stress in the pathogenesis of thoracic aortic aneurysm : protective role of statin and angiotensin II type 1 receptor blocker"Cardiovasc Res. 59. 988-996 (2003)
• [文献書誌] Azumi H, Hirata K, Yokoyama M, et al.: "Immunohistochemical localization of endothelial cell-derived lipase in atherosclerotic human coronary arteries"Cardiovasc Res. 58. 647-654 (2003)