研究課題/領域番号 |
14370230
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
筒井 裕之 北海道大学, 大学院・医学研究科, 教授 (70264017)
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研究分担者 |
多田 英生 九州大学, 九州大学病院, 助手
久保田 徹 九州大学, 大学院・医学研究院, 助手 (40325444)
内海 英雄 九州大学, 薬学研究員, 教授 (20101694)
康 東天 九州大学, 九州大学病院, 助教授 (80214716)
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キーワード | 心不全 / ミトコンドリア / DNA / 電子伝達系 / 活性酸素種 / サイトカイン / 心筋細胞 / 酸化損傷 |
研究概要 |
酸化ストレスは、動脈硬化や虚血-再灌流傷害ばかりでなく、心筋リモデリング・心不全の形成・進展においても重要な役割をはたしていることがあきらかにされてきた。 我々は、心不全に陥った心筋のミトコンドリア電子伝達系で産生された活性酸素が、心筋細胞のミトコンドリア自身、特にミトコンドリアDNAをターゲットとして、その損傷を引き起こすことをあきらかにした。ミトコンドリアDNA傷害は、電子伝達系の複合体酵素の活性低下、電子の伝達障害をきたし、さらなる活性酸素種の産生をもたらすため、悪循環を形成し、ミトコンドリアでの酸化ストレスをさらに亢進させる。 平成16年度は、心不全におけるミトコンドリア転写因子A(TFAM)の役割に関する研究を推進した。近年、TFAMは、ミトコンドリアDNAの複製および維持においても重要な役割を果たしていることが示唆されている。マウスの心筋梗塞後の不全心筋においても、ミトコンドリアDNAのコピー数の減少に伴いTFAMタンパク量が減少していた。したがって、TFAMは、ミトコンドリアDNAコピー数の制御および機能の維持をつかさどっており、その量的減少はミトコンドリアDNAの減少をもたらし、ミトコンドリア呼吸鎖の機能低下から、心機能低下に至ると考えられた。そこで、ミトコンドリア転写因子の遺伝子過剰発現マウスに冠動脈結窄による心筋梗塞を作成したところ、心筋におけるミトコンドリアDNA傷害が抑制された。さらに、心筋梗塞後の左室リモデリングが抑制され、生存率が改善することを見出した。 本研究により、ミトコンドリア由来の酸化ストレスが、ミトコンドリアDNA傷害さらに、心筋の構築および機能変化を引き起こすことによって心不全の形成・進展に密接に関与することがあきらかとなった。
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