研究概要 |
i)DNAチップによる遺伝子変異マウスの解析:胎生10.5日正常マウス胚とET-1ノックアウトマウス胚の鰓弓領域に発現する遺伝子プロファイルをDNAチップによって網羅的に解析し、12,489遺伝子のうちHAND1,2やDlx3,5,6を含む146遺伝子が1/2以下の発現低下、83遺伝子が2倍以上の発現増加とカウントされた。これらのうちでin situハイブリダイゼーションで発現の差が明らかになったものについて、ノックアウトを含めて解析を進めている。 ii)酵母two-hybrid法による転写因子結合蛋白と関連シグナルの同定:神経堤細胞による大血管形成に重要なPax-3の2つの転写因子について、これまでtwo-hybrid法によって転写コアクチベーターのTAZが結合し、Pax-3の転写活性を亢進させること、神経管背側部や神経堤由来組織などでTAZが発現していることを明らかにした。この他いくつかの核内蛋白がPax3に結合することが明らかになり、その解析を進めている。 iii)A型エンドセリン受容体(ETAR)プロモーターを用いた新たな遺伝子改変マウスを用いた解析:ETAR遺伝子プロモーターによって蛍光蛋白GFPを発現させるトランスジェニックマウスを作成し、その発現パターンとソーティングによる発現遺伝子の解析から、GFPが鰓弓へ遊走する神経堤細胞および血管平滑筋細胞の一部に発現していることを明らかにした。さらにこのプロモーターを用い、これらの細胞にトリレトロウィルス受容体TVAを発現させることにより、細胞特異的遺伝子導入の系を樹立した。このマウス胚より切り出して培養した神経堤細胞、鰓弓の神経堤由来間葉細胞に対し、GFPを組み込んだトリレトロウィルスを感染させ、GFPによる蛍光シグナルが認められた。この系を用いて、血管平滑筋分化を制御する細胞内シグナルの解析が進むことが期待される。
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