研究概要 |
i)DNAチップによる遺伝子変異マウスの解析:胎生10.5日正常マウス胚とET-1ノックアウトマウス胚の鰓弓領域に発現する遺伝子プロファイルをDNAチップによって網羅的に解析し、2倍以上の発現増加が認められin situハイブリダイゼーションで発現の差が明らかになった遺伝子として、Calpain6を同定した。この分子はプロテアーゼ活性を持たないCalpainファミリーメンバーであるが、胎生期に鰓弓・心臓・肢芽などで発現し、細胞骨格構築に重要な役割を果たしている可能性が明らかになった。 ii)酵母two-hybrid法による転写因子結合蛋白と関連シグナルの同定:神経堤細胞による大血管形成に重要な転写因子Pax-3の結合因子として、two-hybrid法によって転写コアクチベーターTAZを同定した。TAZがPax-3の転写活性を亢進させること、胎生期においてPax3とTAZが神経管や体節などで共発現することを明らかにした。 iii)鰓弓形成におけるET-1シグナルの役割の解明:全胚培養を用いて、ET-1シグナルがマウス胚形成における鰓弓形態のパターン形成期に働いていることを証明した。さらに、ET-1遺伝子欠損マウス胚の形態学的及び遺伝子発現解析により、ET-1遺伝子欠損マウス胚において転写因子Dlx5,6の発現が消失しているとともに下顎弓が上顎弓へとホメオティック様形態変化を起こしていることを証明した。これにより、ET-1はDlx5,6の発現誘導を介して鰓弓の背腹軸方向のパターン形成を制御していることを明らかにした。
|