研究概要 |
我々が自己免疫性腸症関連自己抗原として単離したautoimmune enteropathy-related 75 kDa antigen(AIE-75)は,小腸・腎近位尿細管の刷子縁および内耳上皮細胞に発現され,その遺伝子の変異はUsher症候群Ic型を引き起こす。一方AIE-75は大腸癌細胞株で発現を認めるが、AIE-75を発現しない細胞にこれを強制発現させると形質転換を起こす。さらに,AIE-75の結合パートナーとして,癌抑制遺伝子産物MCCとホモロジーの高いMCC2が同定されている事から,AIE-75が細胞増殖に何らかの影響を持つことが考えられる.AIE-75の発現制御機構を解明する目的で,AIE-75遺伝子の上流領域の転写活性を検討した。まずAIE-75の発現に関与するシス領域を同定する目的で、21エクソンからなるAIE-75遺伝子の全長とその上流領域約10kbを含むPACクローンを得た。種々の解析よりAIE-75遺伝子の翻訳開始点は転写開始点から+97bp,プロモーター領域は転写開始点の上流203bpと推測された.次いで,ルシフェラーゼアッセイ用のレポーターベクターpGL3basicにプロモータ領域(-203)から翻訳開始点(+97)までをルシフェラーゼ遺伝子とin-frameとなるように組み込んだconstruct(pGL-300)を作製し、さらに,転写開始点より上流-121bpから転写開始点を含むpGL-212,およびpGL-212のうち-63から-9までの54塩基対を欠く(pGL-212δ)constructを作製た。これらをNIH3T3細胞およびAIE-75の発現が確認されている大腸癌細胞株KM12に形質導入し,ルシフェラーゼアッセイを行ったところ,転写活性はpGL-300>PGL-212δ>pGL-212の順に強いことがわかった.このpGL-212δの欠失部には転写制御因子GCF結合モチーフが含まれており,GCFによる発現制御を受けている可能性が示唆された。
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