研究概要 |
我々が自己免疫性腸症関連自己抗原として単離したautoimmune enteropathy-related 75 kDa antigen(AIE-75)は,小腸・腎近位尿細管の刷子縁および内耳上皮細胞に発現する。消化管におけるAIE-75の発現は、絨毛側に強くcrypt側には認めない。従って、AIE-75の発現が細胞周期の影響下にあることが考えられる。今回、AIE-75の発現制御機構を解明する目的で、AIE-75遺伝子の上流領域の転写活性をルシフェラーゼアッセイを用いて検討し、転写開始点より上流-63から-9が負の制御に関与する可能性が示唆された。また、従来に引き続き自己免疫性腸症における抗AIE-75抗体を測定し、全11例中7例でこの自己抗体が陽性であることを見出した。さらに、抗AIE-75抗体陰性の患者血清を用いて新たな自己抗原を検索し、villinを同定した。AIE75遺伝子は感音性難聴と網膜色素変性と特徴とするUsher症候群ICの責任遺伝子でもあるため、内耳や網膜において重要な働きをしている事が示唆される。我々は他施設との共同研究により、網膜においてAIE-75は光受容体とcadherin 23やmyosin VIIを結合させる役割を持ち、一方その発現はこれらの蛋白に依存しないことが明らかになった。また、自己免疫性腸症を主症状とする遺伝性疾患immune dysregulation,polyendocrinopathy,enteropathy,X-linked syndrome(IPEX)の責任遺伝子であるFOXP3遺伝子の解析を行い、新しい変異T1117G置換を見出した。
|