研究概要 |
毎年冬季のインフルエンザ流行期に乳幼児を中心にインフルエンザ脳症が発生し、高頻度に死亡したり後遺症を残し予後不良であるが、その病態は不明である。臨床経過および臨床検査の結果から推察すると,インフルエンザウイルスの鼻粘膜への感染により嗅神経経由でGlia細胞の活性化を引き起こされ、炎症性サイトカインの異常産生増多により脳内が高サイトカイン状態になり、神経細胞障害、脳浮腫が引き起こされる.また炎症性サイトカインにより脳血液関門は破壊され全身にサイトカインが波及するために高サイトカイン血症となり,DIC, MOFが起こると推察される。 病態解明のためラットを用いて脳内に高サイトカイン状態を誘導し、それが全身に及ぼす影響について検討した。ラットの髄腔内にLPSを投与し定時的に髄液、血清を採取し、サイトカインの測定を行った。また定時的に犠牲死させ、組織からmRNAを抽出し、RPA(Rnase Protection assay)にて種々のmRNAの発現の検討をし、さらに組織染色を行い高サイトカインが組織に及ぼす影響について検討した。LPS髄腔内投与により、髄液中のIL-1β、IL-6、TMFαは投与後2〜6時間をピークに上昇した。血清中サイトカインもLPS大量投与群で上昇し、脳内の炎症性サイトカインにより脳血液関門が破壊され、全身にサイトカインが波及することが示された。またLPS投与30分後から脳内にIL-1β、IL-6、TNFαmRNAの発現がみられ、脳実質内の細胞より炎症性サイトカインが産生されていることが証明された。また組織ではGFAPの増加が見られ,LPS投与によりastrocyteの活性化が示唆され,さらにTUNEL陽性細胞が多く見られ炎症性サイトカインにより神経細胞、Glia細胞にアポトーシスが誘導されることが証明された。
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