我々は、以前よりマウスに対し百日咳ワクチンの経鼻接種を試み、最初は市販DPT三種混合ワクチンを様々な濃度で単独又は各種アジュバントと共に鼻孔に接種し、血中抗PT、FHAIgG抗体、鼻腔抗PT、FHAIgA抗体が産生されることを確認した。本年度はDPT三種混合ワクチンに含まれる様々な成分の影響を除くため、精製されたPTおよびFHAを様々な濃度で組み合わせ、アジュバントとして最も効果の高かった陽荷電レジンであるケイキサレートを加えたワクチンを経鼻接種し、その血中抗PT、FHAIgG抗体、鼻腔抗PT、FHAIgA抗体、リンパ球のPT、FHAに対する幼若化反応を測定し、無菌体百日咳ワクチンを筋肉内投与した場合と比較した。筋肉内投与では勿論局所の特異IgA抗体は産生されなかったが、Millsらの報告とは異なり、無菌体ワクチンでも細胞性免疫能は誘導された。一方経鼻接種では、血中IgG抗体のみならず、局所のIgA抗体および百日咳特異細胞性免疫も誘導された。また、接種後のマウス脾臓細胞の培養上清中に分泌されるサイトカイン(IFNγ、IL-2、IL-4、IL-5)を測定することにより、様々な経路で接種されたワクチンにより誘導されるリンパ球のTh1/Th2反応を比較検討しているが、現在のところまだ一定の傾向は得られていない。培養条件等を検討し、来年度も測定を続けたいと思う。
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