研究概要 |
我々は、マウスに対し市販DPT三種混合ワクチン,百日咳菌体成分であるPT,またはFHAを様々な濃度で単独又は、アジュバントとして最も効果の高かった陽荷電レジンであるケイキサレートと共に鼻孔に接種し、その血中抗PT、FHA IgG抗体、鼻腔抗PT、FHA IgA抗体、リンパ球のPT, FHAに対する幼若化反応を測定し、無菌体百日咳ワクチンを筋肉内投与した場合と比較してきた。筋肉内投与では勿論局所の特異IgA抗体は産生されなかったが、Millsらの報告とは異なり、無菌体ワクチンでも細胞性免疫能は誘導された。一方経鼻接種では、血中IgG抗体のみならず、局所のIgA抗体および百日咳特異細胞性免疫も誘導された。また百日咳ワクチン接種により誘導される免疫を詳細に検討するため、市販DPTワクチンを4週間隔で2回接種したマウスの脾臓から採取したリンパ球を、非特異的刺激としてPHA,百日咳特異刺激としてPT,またはFHAと共に培養し、その培養上清中に分泌されるIFN-γ,IL-2,IL-4,IL-10をELISAにて測定した。その結果、IFN-γ,IL-2,IL-4は培養24時間、48時間、72時間と経時的に分泌量が上昇していたが、IL-10は24時間ですでにピークに達し、72時間までほとんど変化は見られなかった。そして、PHA, PT刺激では、IFN-γ,IL-2は明らかな上昇が認められなかったのに比べ、IL-4,IL-10は有為に上昇しており、このワクチンによりTh2優位の反応が惹起されている事が明らかとなった。
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