研究課題
基盤研究(B)
われわれは現時点で報告のある変異のうち、ナンセンス変異以外の点突然変異を有するSERCA2bを51種類全て作成し、これらを内因性SERCA2b活性のないCos1細胞に導入し機能解析を行うシステムを確立した。51種類中、15種類はSERCA2bの発現そのものが低下していた。また21種類はカルシウムポンプ機能と共役するATPase活性が完全に消失していた。さらに残りの8種類はATPase活性はあるもののカルシウムポンプとの間の機能的uncouplingがおきているmutantであった。最後に残った3種類(1274V,L321F,M719I)は、SERCA2bはほぼ正常に発現し、しかも高いカルシウム輸送活性を有していたが、速度論的性質において、それぞれ異なるタイプの異常を示し、1274Vでは正常なカルシウム親和性だが、輸送活性は若干低下し、M719Iではいずれも若干低下していた。さらにL321F変異体はM719Iと同様に細胞質カルシウムに対する親和性が低下していることに加え、小胞体内腔カルシウムによるfeedback inhibitionに対する非感受性を有し、その結果、小胞体内腔カルシウムレベルの異常高値での設定を引き起こすことが明らかとなった。ダリエー病は従来、SERCA2b変異体の極度の発現低下や機能喪失によるhaproinsufficiencyにより発症するものと予測されてきたが、われわれの結果は、ミスセンス変異によっては異なるタイプの速度論的性質の異常により、細胞内カルシウム恒常性の変動が引き起こされることを初めて示したものである。
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