研究概要 |
1)栄養障害型表皮水庖症治療を目的とした人工接着分子の開発 栄養障害型表皮水庖症では欠損VII型コラーゲン蛋白免疫寛容が破綻している。本研究では、完全長VII型コラーゲン蛋白の発現は破綻しているが、NC-1ドメイン領域までの発現は維持されている症例に対し、免疫応答誘導の可能性を低下させ、より有効な遺伝子治療法を開発することを目的として、NC-1とファイブロネクチン・コラーゲン結合ドメイン(FNCBD)のキメラ分子の発現ベクターを作製した。ヒト培養細胞株であるHaCAT細胞にNC-1/FNCBDを発現させ、その蛋白分子の産生が可能になった。この組み換え蛋白は単一ペプチドで機能すると考えられるため、その精製標品は人工接着分子として表皮水庖症治療に有効と思われる。現在NC-1/FNCBDトランスジェニックマウスを作製し、COL7A1ノックアウトマウスと掛け合わせることによりその治療効果確認を進めている。 2)生体皮膚への遺伝子導入法開発 生体皮膚は分子量1,000を超える分子の通過を厳密に制限しているため、分子量数百万を超えるNC-1/FNCBD発現ベクターの皮膚への導入は極めて困難である。そこで本研究では、遺伝子発現ベクターの生体皮膚への導入法開発を行った。50%グリコール酸溶液でラット皮膚を10分間処理することにより、表皮角層および顆粒層を変性・除去可能であることが確認された。次いで、グリコール酸処理した皮膚に対して、超音波エネルギーを利用した遺伝子導入を試みた結果、グリコール酸未処理皮膚に比較して、処理した皮膚では約10,000倍の遺伝子導入効果が得られることが明らかとなった。本法を利用してNC-1/FNCBD発現ベクターをラット皮膚に導入した結果、表皮での発現を確認し得た。
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